日光建物探訪③-SHELTER GARDEN NIKKO

久しぶりに行動制限のない夏、とは言え、かなり自分を制しつつ、夫婦で日光へ行って参りました。

「観光目線ではない」建物探訪記を3回に分けて綴ります。最終回はホテル編です。

(前回はコチラ)

日光建物探訪①-那珂川町馬頭広重美術館

日光建物探訪②-大谷石の蔵

 

++++++++++++

 

今回は「シェルターガーデン日光」に宿泊しました。日光東照宮から車で5分ほど走った山の中にあるリゾートホテルです。

インテリアが、なんというか・・・ユニークでした。

スタッフの方はとてもフレンドリー。開業されてから1年とまだ新しいこともあり随所に一生懸命さが伝わってきます。もてなしにも遊び心を感じました。

 

ラウンジでシャンパンをいただきながらチェックイン。まず目に飛び込んでくるのは山の緑。そしてこの床。ゴツイです。

 

ホテルのコンセプトは、フランスの田舎町にある中世の小さなホテルからインスピレーションを得たとか。今の建築にない手作りのぬくもりがあったのだそうです。素材本来の素朴さや温かみを感じてもらいたいとのことです。

私達が泊まったのはリバービューのスーペリアルームです。

ラウンジと同様に、ここでも無垢の木が多用されています。無塗装のモールディングを見るのは初めてです。それが一瞬、DIY?と疑うようなラフな納まり。突き合わせの部分がズレていたり、端っこを揃えて切ってなかったり。クローゼットの扉も古材のような荒い仕上がりの無垢板がこれまたラフに貼られていて、鉄のフックで留めるようになっています。

「え?こんな雑でええの?」と思ってしまいましたが、そこは「敢えて」「わざと」でした。

デザインはとてもモダンだけれど、自然素材をふんだんに使ったラフな仕上げ。このバランスがとても興味深いお部屋でした。

一方、寝具やカーペットやタオル、パジャマなどはとても質のよいもので、備品やアメニティも充実しています。すっごい山の中ですが、Wifiやサブスクなどデジタル環境も不自由ありません。

写真いっぱい撮ったのでUPします。

 

リバービューのお部屋。インテリアの一番のポイントは2300×2300の一枚ガラスの窓。素晴らしい眺め!です。モールディングの額縁が付いていて、まさに絵画をみるようです。パーソナルチェアは不揃い。クッションカバーも馴染ませるのではなく外しで。

 

ベッドはSealy。バスルームの天井とテキスタイルはブラックで部屋とまた雰囲気が違います。ガラス張りなのは、バスタブからも山を見るため、だと思います。

 

でもこのインテリアは好みが分かれそう。年代も選ぶと思います。ご高齢の方は恐らく寛げません。小さなお子様のいるファミリー向けでもないような。

建物探訪が大好きな私は興味深々。とても楽しめました。

大自然の中に立つホテル、同じ自然素材を使っても、馴染ませるような和のデザインもあり、そっちも大好物ですが、たまにはこういった刺激的なデザインも面白い。思い出になります。

 

デスクコーナーには偶然にもディアガーデンの事務所の椅子と同じエルゴヒューマン。こんな部屋だったら寛ぎ過ぎて仕事にならんな。

 

大型額縁のビューウインドウはベッドからだけでなく、バスルームからも楽しめます。猫足のバスタブが置かれています。洗面は鉄。シンクも鉄。なんと叩いて窪みを作っていました。シャワーブースとトイレもここ。

 

猫足のバスタブは初めてでしたが、170cmと大きめな私の身体にジャストフィットでした。頭から背中にかけてが安定するというか、特に頭の納まりが良かったです。足もゆったり延ばせました。

日光峰山清湧加温の湯に、2種類用意されていたバスソルトのうち、フローラルな香りの方を入れて、窓外の景色を見ながら非日常に酔いしれました。

猫足のバスタブ、また機会があったら入りたいな。

 

バーコーナーに置いてあったKalitaのコーヒーセットを使ってコーヒータイム。ポットはBalmuda、豆とカップ&ソーサ―オリジナル、水は湧き水だそう。夫が豆を挽いて淹れてくれました。

 

++++++++++++

 

お風呂でサッパリしたら、着替えて、ラウンジでカクテルタイムです。

スパークリングワイン、厳選されたワイン、カクテルなどが無料でいただけるサービスがあって、おかわりもできます。

これは嬉しい。

 

ラウンジのバーコーナー。ポイントに使われたブラックが素敵。

 

カクテルタイム満喫中。キリッと冷えた白ワイン、美味しかった~。

 

さて、ホテルのお楽しみといえば食事は外せません。

こちらもオリジナリティあふれるメニューでした。建物探訪記なので詳細は端折りますけれど、初めていただく味もありました。量もちょうどよく、どれも大変美味しゅうございました。窓外には夕暮れから星空へと変わる大自然の風景、寛ぎながらいただく美味しい食事、しかも後片付けしなくていい・・・旅の醍醐味です。

ブログの初めに、もてなしに遊び心を感じたと書きましたが、それはDJブースがあるところです。(上の画像左端)

ラウンジの端に立派なDJブースやスピーカーがあり、お客からリクエスト曲募り、それをDJの方が紹介しながらかけてくれるのです。

どんな曲でもいいというので、面白半分で、私達夫婦もたくさんリクエストしました。会話を邪魔しない音量で、しかもDJの方がいい感じの曲紹介をしてくれるので、色々なジャンルの曲が流れても不思議と場の雰囲気は壊れません。むしろすごく良かったです。

久しぶりに聴いた曲で、すっかり忘れていた思い出が沢山蘇り、とても楽しい時間になりました。

 

メインのステーキを盛った器は切り株でした。森の木の再利用だそう。

 

朝、またコーヒーを淹れてもらって。この日もいいお天気で眺めは最高。

 

朝食のあと、まだ時間があったので、テラスに出てみました。

ちょうど建物の陰に入り、とても涼しく快適でした。

コンクリートのシンプルなテラスで、椅子が何組かと、下に落ちないようにだと思うのですが、端に木を植えた鉢が少しだけ置いてあります。

こちらの眺めは部屋からみた眺めと同じですが、当然ながらガラス越しに見るよりライブ感があります。鳥の声が聞こえ、美味しい空気も満喫できます。

 

テラスにはイームズのラウンジチェアにオットマン。サイドテーブルが切り株ってところがお洒落。

 

テラスから見える景色。大自然が広がります。足元を除くと稲荷川のせせらぎが。

 

私が暮らす滋賀も相当田舎なので、似たような景色がありますけれど、普段は街中に住んでいるわけで、この解放感はやっぱり特別です。

建物のロケーションって大事。その中でもどこを切り取るか、それもセンスだなぁとつくづく感じます。

 

旅の最後の日の朝。この雄大な景色にしばし酔いしれる二人なのでした。

 

3回に渡った日光建物探訪。

ところ違えば、建物もだいぶ違いますね~。

私はガーデンデザイナーですが、庭と同じくらい、建築にも興味があります。

近い将来、長らく行けてない海外でも建物探訪してみたいです。

 

 

日光建物探訪②-大谷石の蔵

久しぶりに行動制限のない夏、とは言え、かなり自分を制しつつ、日光へ行って参りました。

「観光目線ではない」建物探訪記を3回に分けて綴ります。

(前回はコチラ→日光建物探訪①-那珂川町馬頭広重美術館

 

++++++++++++

 

宇都宮駅までは新幹線、そこからレンタカーであちこち巡りました。

その道すがら、頻繁に大谷石(おおやいし)の蔵を見かけたのです。産地とは知っていましたが、このように使われていることは初めて知りました。

母屋の離れに1棟たっているのが基本パターン。中には2棟建っていたり、かなり大きな蔵もあります。蔵の装飾や瓦の色もそれぞれで、次々現れる蔵を見ているだけでも、すごく楽しかったです。

よくよく見ていると、蔵だけでなく、敷地を囲う塀であったり、農業用ポンプ小屋、消防器具庫までもが大谷石だったりします。

レンタカーの助手席で、「あ、あの蔵カワイー」とか「あれ、凄く立派やわ〜!」とか叫びながら大コーフン状態の私。

ゆっくり見たいけれど、ドライバーの夫がなかなか止まってくれないので、撮影もままなりません。

中でも小マシに撮れたものをUPします。

 

正面は大体このようなデザインが多かったです。入口には下屋(庇)がついており、窓は2階正面に2つ、横にも1つ。その上は家紋かな?こちらの瓦の色は珍しい青でとっても可愛いと思った蔵です。

 

大谷石は火山灰や軽石岩片が固結して生まれた「軽石凝灰岩」で、栃木県宇都宮市北西部の大谷町付近一帯で採掘される石材です。

軽量で、調湿性に優れ、防火性も高い。おまけに柔らかいので加工が容易なことから建築資材として多用されています。

私は使ったことはありませんが、大谷石は好きな石です。素朴かつ柔らかな風合いにとても惹かれます。

 

道路から見えるのは裏側ばかり。同じ敷地に2棟も蔵がある!こちらは状態も良くて立派ですね。

 

大谷石の蔵は、明治・大正時代に建てはじめられ昭和初期に広まったようです。

建物の構造の一部である扉や窓も大谷石で、様々な彫刻が施されていました。

しかも必ず家紋や屋号などの印が付いています。

蔵とは分かりますが、洋館風でもあり、すごくお洒落な建物という印象を持ちました。

しかし、中には崩れかけた蔵や、空き家らしく荒れ放題の蔵も沢山あり、維持管理は大変だろうなと思いました。

蔵が大谷石なら、塀も大谷石というお宅も多かった。

 

市内にはこのような大谷石の蔵を改装したレストラン(ここ素敵!→「石の蔵」)やカフェがあります。

帰宅後に知ったことですが、宇都宮市では「大谷石蔵活用事業」で空き石蔵物件と借り手のマッチングなど色々な取り組みをされているそう。

この美しい蔵がこれから先も遺っていきますように、期待してやみません。

 

宿泊先のホテルの日本酒バーの内装。壁の一部に大谷石が貼られていました(矢印ところ)

 

行く先々で大谷石が目に付いて、「いいなぁ~」「素敵だなぁ~」「蔵、買って~」って連発していた私です。

大谷石のことをもっと知りたい方は、大谷資料館がおすすめです。私は時間の都合で行けませんでしたが、夏はヒンヤリしてて人気スポットらしいです。

 

++++++++++++

 

さて、折角なので、観光についてもサラッと。

メインは日光東照宮で、その付近の寺院仏閣もいくつか巡りました。(中には秘境みたいな神社も)

東照宮は修理を終えて間もないこともあり、とにかくあちこち金ピカで、「ほー」とか「はー」とか溜息ばかり。龍や妖獣の手の込んだ細工は、いくら見てもキリがない程です。

境内の石垣という石垣が苔むしていて、灯籠も素晴らしく、そちらも見所満載でした。

個人的に嬉しかったのは、御本社で、久しぶりに幣でお祓いをしていただいたこと、かな。お隣の輪王寺ではタイミングよく秘仏も拝ませていただきました。

 

日光東照宮の陽明門(別名、日暮の門)です。遠く樹々の間から金箔がキラキラと輝いているのが見えました。この細工には本当に驚きです。

 

それから華厳の滝。

ここに辿りつくまでイロハ坂というヘアピンカーブがいくつも重なる峠をドライブするのですが、スリル満点です。

華厳の滝は飛沫がすごいせいか、虹が出ていてとても綺麗でした。色々な角度で眺められるのが有難かったです。

 

華厳の滝。そのパワーに圧倒されます。イワツバメが気持ち良さげにヒュンヒュン飛びまくっていました。

 

虹が綺麗でした。(丸印のところ)見てるように撮れないのが残念です。

 

山の中で。これはイワジャシンかな?と思ったのですが、自信がありません。美しくて欲しくなるけれども、こういう場所では撮るだけね。

 

小さな滝や川もたくさんあって、それぞれに美しかった。

雨が多く常に湿っているので、様々な山野草が生き生きと育ち、目の喜ばせてくれました。

次回は日光建築探訪のラスト。ホテル編です。

 

 

日光建物探訪①-那珂川町馬頭広重美術館

久しぶりに行動制限のない夏、とは言え、かなり自分を制しつつ、日光へ行って参りました。

(ちなみに、帰宅後しばらくして受けたPCR検査は陰性でした。今のところ健康状態は良好です)

まずは新幹線で東京を経由し宇都宮へ、それからはレンタカーに乗り換え、日光東照宮など建物を探訪する小旅行です。

実はコロナ前に次の旅行先は日光と思っていたのです。あれから3年が経って、ようやく行けました。

観光地や温泉、地元の美味しいモノなど色々と楽しみましたが、ブログでは敢えて「観光目線ではない」建物探訪記を書こうと思います。

 

++++++++++++

 

栃木へ行くと決まって、東照宮の他に「絶対に行きたい」ところと言えば「那珂川町馬頭広重美術館」でした。

建築家の隈研吾さんが手掛けた美術館で、CMの撮影場所としても時々使われているので、ご存じの方もいらっしゃると思います。

ここは栃木県の観光スポットの中でも、かなりマイナーな場所みたいですが、隈さんファンで、美術館巡りが大好きな私にとっては、憧れの美術館。

隈さんの作品なら県内では他に「石の美術館 STONE PLAZA」最近では「宝積寺駅舎」などもあり、美術館なら藤城清治美術館、奈良美智さんのN’S YARDなど心惹かれる場所は多々ありましたが、限られた時間で一つとなるとここなんですよ。

 

憧れの馬頭広重美術館。正面です。関西から行くには相当困難な場所にあるため諦めていましたが、念願叶って来れました。山の中にあるのかと思いきや山裾。村の一角にあるという感じ。

 

こちらの展示は、栃木県さくら市出身の実業家 青木藤作氏収集による広重の肉筆画や版画をはじめとする美術品が中心です。

木版画は異なる版木を何度も擦り重ねて色や奥行を表現するもの。隈さんはこの美術館を設計するに当たり、地元産の八溝杉による格子(ルーバー)を使って、木版画の工程を建築化した・・・みたいなことを言われています。

2000年竣工とありますので数ある隈さんのルーバー作品の中でも初期の頃ではと思います。

詳しくはコチラ→ 隈建築設計事務所のサイト 馬頭美術館PROJECTのページ

 

ルーバーのレイヤーがつくりだす景色、陰

 

実際、行って見ると、想像していたよりもだいぶ小さな建物でした。

平屋で切妻の屋根、That’all。

思うにこの佇まいは、まるで神社のそれです。

景色の邪魔にならず、かといって溶け込み過ぎる訳ではありません。

存在感は物凄くある。

 

広いアプローチ。迫力の大屋根。奥の限られた開口部から見える庭が眩しい。色々と計算されているのを感じます。

 

余談ですが。

こんなに美しいアプローチ↑の目に付くところに、ド派手なピンクのどこでもドアみたいなものが置いてありました。画像左、ミュージアムカフェの入口付近です。(撮影の際、思わず見切ってしまいました)

これははたして展示なのか?SNS用なのか?実際20代らしきカップルが撮影に励んでいましたけど。

正直、悪目立ちしているとしか思えません。嫌悪感すら感じたけれど、こればっかりは人それぞれですしね。

自分をなだめてさらに真っ直ぐ進むと、庭へ出ます。

 

庭側から建物の裏を見る。CMではこの辺りによく車が登場しますよねー。

 

庭から見る。モノトーンの建築に色を添えるのは空と竹のみ。絵になるなぁ。

 

外観を色々な角度から堪能していると、あっというまに30分程経っていました。

流石に暑くなってきて、企画展「二つの百人一首 《小倉擬百人一首》と《百人一首之内》」を見ることに。

夏休みなのに全く混んでおらず、お陰で久しぶりの浮世絵をゆっくり堪能できました。

 

チケット買って展示室へ向かう廊下。この日の私は和モダンな馬頭広重美術館に合わせてストライプ&モノトーンコーデです。

 

内装にも地元の材。壁は烏山和紙、床は芦野石だそう。太鼓貼りの壁からもれる灯りが優しい。

 

縦格子の屋根は影も美しい。屋根と影のラインが、奥に目線を引っ張っていくような。

 

窓を覆うシャープな線は、広重の描く雨のよう。

 

庭は裏山を背景に砂利が敷き詰められ、竹が植えられているだけです。これまた神社の参道のようでもあり、お寺の方丈庭園のようでもあります。

おおきな「余白」として存在するこの庭は、中から見ると全く違って見えます。

窓にもルーバーがついていて、それを通して眺めると、ただの砂利の広場に先程見た広重の雨が降っているように見えます。また、屋根のルーバーはモダンな影を映し出し、それがまたレイヤーになっていて・・・と、色々な見え方が楽しめるのです。

建築と庭の素敵なつながり。なるほどです。

こんなに単純なフォルムの建築なのに、見所はたくさんあります。

ブログ読者様にもこの感じ、伝わったでしょうか。

宇都宮駅から1時間以上、だいぶ遠かったけれど、やっぱり来て見て良かったです。

次回は現地で見かけた大谷石の蔵について。日光観光の様子も少し書きます。

植生観察とデザインの原点を確認

気が付けばもう10月。

晩秋に予定している工事の準備をしつつ、来春に向けての案件もいくつか動きはじめ、何となく気忙しい日々を過ごしております。

先日は出張で久しぶりに長野県へ参りました。とあるショールームの造園設計のためです。

広い敷地には素敵な建物が建っており、それ以外の部分はほとんど白紙の状態です。お客様のご要望は少なく「後は全てお任せします」とおっしゃいます。最近こういう風に言って下さるお客様が増えて、有難いような~難しいような~。植物や庭のことはよく分からないので「任せます」とおっしゃるのですが、その真っ直ぐなご信頼と期待感たるや・・・かなりのプレッシャーです。

今回の打ち合わせでは、いくつか可能性をお伝えしつつ漠然としたビジョンを掘り起こし、方向性を決めて参りました。

ご期待にお応えするべく力を尽くさねばと思います。

 

++++++++++++

 

他府県で庭を設計するときは、念のためその土地に合う植物を調べたり、その土地に行けるのなら何が育っているのか観察します。隣県ならほぼ変わらない植生も、エリアが変わると若干違ったりするからです。

観察する場合は、移動中の車窓からや個人邸の庭は通りから。時間があれば、公開されている庭園や観光公園、美術館の庭などを訪ねます。

長野県へは壮大な自然に魅了されて、これまで公私合わせると十数回は訪れておりますが、設計の仕事は久しぶりなので、今回改めて、仕事をする場所に程近い松本市で植生の確認をして戻りました。

街中を歩くだけでも、関西では馴染みのない木が普通に植わっていて「へぇー」です。例えば街路樹がカツラだったり、生垣はイチイが圧倒的に多い、等。逆に馴染みのある木が普通に育ってるのを確認すると安心材料になります。

雑木の庭がある「松本民芸館」にも立ち寄ってみました。

 

松本民芸館の門

 

門から一歩足を踏み入れると、見上げる程のケヤキやブナの木。そして足元に様々な雑木が植えられています。

広さは10m×20m位?(適当です・・・)で、木々の他は園路が見えるだけ。まさに用の美というか、とても簡素な庭です。圧倒的な緑に包まれ、鳥の囀りだけが心地よく響いて、何とも気持ち良い空間。ここにいる鳥たちはここが好きなんでしょうね。声がものすごく大きく感じました。

モミジ、ダンコウバイ、クヌギ、クロモジ、ニシキギ・・等々、植えられた木々をメモしつつ散策しました。見知った木が多かったことは良かったです。

 

門と建物の間にある庭。すっきりとしたデザインの、でも味のある園路が2方向に延びており散策できます。

 

土蔵造りの美しい建物に国内外の民藝品がゆったりと展示されています。照明や家具、活けられた花々も美しいこと。

 

ここは、元は、民芸店のオーナー故丸山太郎氏が、柳宗悦氏の民芸運動に共鳴して集めた日本や世界の民芸コレクションを収蔵した私設資料館だったそうです。

展示品の面白さ、そして建築に使われている素材、間取りやディテールに、故人のこだわりが見えてきます。

(民藝品について感じ入ること多々ありましたが、長くなるので端折ります。またいつか)

建築と庭の雰囲気がとても合っていると思いました。

 

++++++++++++

 

長野県はギリギリ日帰りできる距離ではありますが、往復9時間近くかかる移動が身体に堪えるであろうことは、経験より想像できました。

それで今回は一泊させてもらい、翌日午前中いっぱい植生観察に費やして戻ることにしました。

宿は、泊まれる民藝「松本ホテル花月」さんを予約しました。

 

松本ホテル花月さん。松本城へ徒歩5分の場所です。打ち合わせを終えホテルに着いたのは夕方。ライトアップされた外観が美しい。

 

松本ホテル花月さんは、大正ロマンあふれる洋館に松本民芸家具を配した粋なシティホテルです。2016年にリブランドオープンされていて、建築設計は永山 祐子氏、インテリアデザインは濱川 秀樹氏によるものだそうです。

ロビーが超絶素敵でした!

まだあちこち緊急事態宣言中の頃だったので宿泊客はまばら。素敵な空間を長い間独り占めしつつ、ここでもまた観察してしまいました。

 

松本民芸家具が配された重厚なロビー。民藝品がセンス良く飾られて。

 

家具に合わせた壁の色、タイル、照明、天井仕上げ、窓・・・全てがマッチしていてため息です。それぞれの素材の存在感は確かにあるのに出過ぎずバランス感が絶妙。落ち着きます。

 

このタイル、陰影がいい感じに出でて好きだなぁ。ホテル向いの建物の外装にも使われていました。

 

お部屋も松本民芸家具でコーディネートされいて、簡素なのですが十分。大人の雰囲気でした。

直前予約だったのでビジネスホテル並みのお値段になったのにもかかわらず、宿泊客が少ないということで、一人だけどツインルームにアップグレードまでして下さいまして、なんだか申し訳ない気分。でも有難かったです。

Bluetoothスピーカーが置いてあったのも嬉しくて。静かな音楽を流してリラックス出来ました。

 

++++++++++++

 

民藝は「無心の美」「自然の美」「健康の美」そして「用の美」と表現されます。

暮らしの中で使われることを考えて作られ、使われることによって輝く、そんな美を言うそうです。それは私のデザインの目指すところでもあります。用途に即したデザインでないと経年変化に耐えられないと思うからです。

今回の出張は、改めて自分のデザインの原点を確認できた良い機会でした。

 

 

2019年私的総括

2019年も残すところあと1日。手帳を見返しながら静かに振り返っています。

今年も庭づくり通して色々な方に出会い大変お世話になりました。

ご依頼くださったお客様、庭を作るまでにや相談に乗って下さった方々や細かな注文に答えて下さった仕入先の皆様、そして汗をかいて力を尽くして庭を作って下さった職人さん、ひとつの現場でも多くの方にお世話になりました。なによりその仕事をいただけたのは、これまでのお客様あってのことですから、本当に有難く存じます。

そして楽しい時を一緒に過ごしてくれた友に。最後に、私の仕事を理解してくれてサポートしてくれる家族に感謝したいです。

周りの方のお陰で実りある一年を過ごすことが出来ました。本当に有難うございます♡

 

++++++++++++

 

今年は、元号が平成から初めて日本の古典に由来する令和へと変わり、改めて日本文化を見直すきっかけをいただきました。

 

祝賀ムードに包まれた一年でしたね。これは春にいった富山チューリップ祭りで撮ったもの。素晴らしい仕事です。きれい!

 

どういうお導きかわかりませんが、そういえば今年のディアガーデンは和の庭に縁があって、作庭したのも探訪したのも、和の庭ばかり。

この仕事をはじめたころの私は、石を据えることに憧れを抱いていました。そもそも自分に依頼があるんだろうか?って自信のなさから思っていました。でも和の庭も大好きだから、いつかは!と、依頼があるなしに関わらず、とにかく先人の作った良い庭を見まくって、どうしてその石はそこにそうあるのか、自分なりにずっとずっと考えてきました。伝統を学び、空間や植物とのバランスを見て感じてセンスを磨く、その積み重ねです。

それが今、機会をいただけるようになって、少しは生かせていると思います。石を据えるのは難しいけれど、正解がないのが私にとっては救いです。だから面白くて楽しいです。

小さな石でもどう据えるか?職人さんたちとあーでもないこーでもないと言って作り出すことが、刺激的で、魅力的で、本当に楽しくてたまりません。石はめちゃめちゃ重いから動かせないくせに、気が付いたら職人さんを押しのけて、動かそうとしているくらいです。それで、やっぱり重いから「すみません、無理でした」といって、やっていただくんですけど。

体力的に徐々にキツくなってきたので、ケガをしないためにも、身体づくりをしっかり考えてやらないとな。

 

こんな感じで、来年もかわらず一生懸命作庭と向き合って参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

庭探訪しつつ忘年会-南禅寺参道 菊水

少し前の食事会のことです。忘年会っていう名目で集まったわけではありませんが、師走ともなると、自然にそうなっちゃいますね~。

せっかく時間を設けて行くのだから、お庭をじっくり鑑賞しつつお勉強できるお店がいいなぁ・・・と伺ったのが、料理旅館「南禅寺参道 菊水」さん。

こちらは昨年6月にリニューアルオープン。数寄屋造りの建物がどんなふうにリノベーションされたのかしら?お庭は室内からどんな風に見えるのだろう?お料理よりも、そっちばっかりが気になってしまいます。

 

南禅寺の参道を少し入った小道をいくと現れる「南禅寺参道 菊水」さんの立派な門。アプローチの敷石が何気にモダンな敷き方で。

 

元は1895年頃に呉服商・寺村助右衛門の別荘として建てられたものだそうで、大きな木々がこの場の歴史を物語っています。門をくぐると、観光客で賑わう参道付近からは想像できない静けさが広がっていて、それになんだかとっても清々しい。

街中であっても、木をたくさん植えることで、喧騒と物理的に離れられるし、空気自体も変えられるんだなぁって実感しました。

少し早めに着いたこともあって、門からお玄関まで、いっぱい写真を撮ったりして、相当な時間を過ごしてしまいました。先が思いやられます(^^;

 

趣ある玄関。和そのものですが、ナント、靴を履いたままお部屋に向かいます。

 

通していただいたお部屋には、専用のクローゼット、専用の化粧室もついていて、ひと家族泊まれそうな程ゆったりとした空間。他にも庭園内に3つの離れがあって、そちらも凄く雰囲気良さそう。

そして、何より贅沢なのが、部屋に入ったとたん飛び込んでくる庭の景色。壁一面が窓になっていて、まさにピクチャーウィンドウです。ガラスは存在を感じられないくらいピッカピカ。

散り始めたモミジの葉も目に付くところや園路などはスッキリ、茂みとか樹幹の下にはふんわり積もっています。聞くと、毎日庭師さんがお掃除に来られているそうです。

もちろんこのあたりの別荘のお庭といったら植治の庭です。琵琶湖の疎水を引き込んだ池泉回遊式庭園が広がっています。

 

これこそまさにピクチャーウィンドウ。光の具合でどんどん見え方が変わる絵画です。ずっと見ていられます。

 

床の間の室礼。置いてあるものは、よく分かりませんが、香炉と干菓子作りの道具のような?お軸も新しいもののようですっきりモダンな印象です。

 

庭ばかり見ているので、お料理をいただくペースがすっごい遅い(笑)でもその遅さに合わせて出して下さいますし、急かされる感じは全くしませんでした。畳敷きのお部屋ですが、テーブルと椅子でいただく懐石、足が楽です。

 

古き良き時代の灯籠も、足当たりのいい石も、様々に変わる水の景色も素敵なんですが、この庭で一番目を惹きつけられたのはなんといっても庭の中央にある大赤松です。

幹肌が本当に美しい赤松、日が当たると一層映えて、艶っぽさも感じる程。周りのモミジがいくら赤く染まっても全く引けを取りません。堂々とした幹からは相当な年月を感じさせますが、姿はどうも新しく整えられたように見えます。

 

赤松の幹肌。磨きをかけるとこんなに赤くなります。常に磨いているからゴツゴツの樹皮じゃないです。

 

赤松が美しい庭は、細やかなお手入れがされている証です。というのも、剪定するときに、仕上げに幹肌まで磨いておられるからです。山にある赤松の幹はこんなに滑らかで赤くないでしょう?

赤松は女松(めまつ)対して黒松は男松(おまつ)と呼んだりします。職人さんはそれぞれの木の特徴を生かし手入れをされるので、女松は女松らしくというと、肌を磨いてその美しさを引き出してあげるんですね。

それにしても、最初は誰が始めたんでしょう?あのひび割れた幹肌を磨くなんて!その発想が、私には突拍子もなく感じられ素晴らしいなと思います。どうやって良く見せてやろうか?って、ずっと赤松のことを考えていないと出てこない発想かと。

松の幹でも磨けば美しくなるです。自分の肌も磨いてやらなきゃなぁと密かに思った次第です。

 

お庭が散策できます。点在する離れとのつながりが、どこも違和感なくそれでいて変化もあって。

 

新しく出来たデッキ。レストランスペースに繋がっています。このデザインが気持ち的に敷居の高さを緩和してくれてる。ここでいただくアフタヌーンティは格別だろうな。

 

繊細で美味しいお料理や、美しい器、つかず離れずのおもてなしを堪能しつつ感じたのは、やっぱり「お庭の美しいところにはハズレがない!」ということです。

庭の大きさとかじゃなく、庭に対するこだわりや状態を知れば、お店の心遣いが分かります。

 

 

町家とその庭、住まい方-無名舎(吉田家住宅)

特別公開中の京町家「無名舎(吉田家住宅)」さんを見学してまいりました。

こちら、昔は白生地問屋だったそうで、建物は大店(おおだな)によく見られる「表屋造り」。棟と棟の間に小さな庭(坪庭)が複数箇所設けられているのが特徴で、採光や風通しに問題がある町家建築の弱点を補っています。国登録有形文化財の指定を受けた貴重な建物ですが、現在も住まいとして使われています。

過去メディアで何度も取り上げられたお宅ですから、建物や庭のウンチクは、ウェブ検索すると山ほど出てまいります。ですので、詳細はそちらにお任せするとして、私は住まい方についていいなぁと思った点など書きたいと思います。

 

++++++++++

 

暖簾をくぐると、店の間、そして玄関へと続きます。

玄関先は外部空間となっていて、足元には洒落た石貼りが。それが通り庭へと伸びています。ここにある腰掛待合は、茶道を嗜まれるご当主が近年作られたものだそう。新しいものなのに、明治に作られた建物と違和感なく合っているのはさすがです。

腰掛待合とは、お茶事で客が茶席に入るまでの間待機する場所。玄関棟の隣棟にある座敷に炉を切ってお茶室にされています。水屋も押し入れのスペースを上手く利用して設けられていました。

登録有形文化財とはいえ、外観を著しく変更しなければ改修や改装も行うことができるそう。建物を守ることは大事だけれど、住まい手が楽しく暮らすことも大事。吉田家住宅はそのあたりのバランスが素晴らしい。ご当主様の知性とセンスによるものだと思います。

 

玄関の脇にある腰掛待合。こう見えて一番新しい。石の貼り方が凝ってます。

 

玄関で靴を脱いで上がらせてもらいますと、座敷には網代が敷かてれいます。町家独特の夏の室礼の一部で、ヒンヤリとした感触が心地いい。その冷たさは予想以上で「うちにも網代、欲しいな~」と思うくらいでした。

吉田家は季節によって敷物や建具を変えられます。床の間の軸、各部屋の室礼、先ほどの書きました水屋に置かれたものなどは、季節毎ではなく、それはもうしょちゅう変えられているそうです。

お気に入りの美術品や道具類がいっぱいあったら・・・私もそんな風にとっかえひっかえして遊びたい!

 

玄関棟から見る坪庭。向かって右に店舗棟、左に住居棟があり、それらを上手くつなぐのがこの坪庭です。棕櫚竹とシダ、灯籠、手水鉢などが品よく配されています。

 

小判型に繰りぬかれていた手水鉢。商家ならでのユニークな発想ですね。

 

庭は、店と玄関・住居棟の3方に接する「中庭」と、住居棟と蔵の間にある「奥の庭」の2カ所。

そう大きくない空間ですが、灯籠や手水鉢が配され、ちょっとした露地を思わせます。坪庭がこのような形になったのも、茶道の露地の体裁を取り入れたからだと言われています。常緑植物が多いのも露地由来かなと思います。

中庭はあまり日が差さない陰の庭、奥の庭は日当たりのいい陽の庭となっていて、部屋の障子をあけ放つと気圧の差によって風が通る仕組みです。これは皆様もよくご存じのことと思います。

庭を空調設備とするこの仕組みは、暮らしの知恵?それともちゃんとした計算?少しでも涼しさを感じようという京都人の執念のようなものを感じますね。

 

網代、簀戸など夏座敷の室礼のむこうにも庭が見えます。床に敷かれた網代は、冷たい感触だけれなく、水が撒かれたかのように艶があり目にも涼しい。

 

木陰のように薄暗い座敷に座ると、前には明るい庭が見えて、そのコントラストの美しさは圧巻。でもとても落ち着きます。奥の間の簀戸を引いてもらうと、庭がより涼し気に見えました。冬は簀戸が障子に変わるので、庭の光が障子紙を通して拡散され、室内がほわっと明るくなります。建具替えの妙です。

これを行うには、その労力も大変ながら、凄い枚数の建具を収納する場所が必要です。おいそれとは真似できません。更にいうとエアコンが設置できません。窓を開け放っているので虫も入って来るでしょう。冬は恐ろしく寒いといいます。

空調設備に慣らされた私は、この粋な暮らしに憧れつつも、無理やわ~と思ってしまう。それでもこの世界観を取り入れることは出来ます。

庭は敷地の東~東南方向にひとつ、部屋から庭を見えるように窓を大きく開けます。そして対面にも窓を設けます。西〜北側は庭でなくとも木を植えるだけでOK。庭は背景を遮断し、僅かでもいいので常緑植物を植え、お気に入りの照明やオブジェを置きます。庭を歩きたければ小道を作ります。

灯籠も庭石も場に合わせて決まり事のようなものあり、難しく考えてしまいがちですが、要は今でいう照明とオブジェ、と見立ててみましょう。照明器具に凝るように昔の人も灯籠を選び、灯りが欲しいところにいくつも置いたのです。

オブジェがあると、庭に変化が付くし、その人の個性も出ますよね?それと同じように昔の人も、どこそこの石がいいとか好きとか、鶴みたいな形の石がいいとか、どうせなら亀みたいな形の石も合わせて置くと「鶴亀」になって縁起良さそうとか、考えたのですね。可愛いじゃないですか。

 

奥の庭。鶴亀石はじめ京都の名石がゴロゴロ。侘助椿が灯籠をふわっと覆って素敵です(灯障りの木といいます)簾をよく見ると波の模様が。格のある奥の間だけに凝ってますね~。

 

沓脱石は貴重な鞍馬石。奥の縁先手水鉢の足元は大きく掘りとられ海という部分。大雨時は水がここに流れ込むようになっています。

 

昔ならではの素材、施工方法は、それしかなかった当時を思うと、良く考えられているなぁと尊敬する部分が多々あります。

中庭は大雨の時に、どうしても水が溜まりやすい。今なら暗渠排水といって透水パイプを埋め、それを桝に接続し、外部の側溝に流すようにするのですが、昔は違います。庭の一部を深く掘って、地面に傾斜をつけてそこに水が流れ込むようにしています。溜まった水は土に浸透させて、そのうち無くなるのを待つのです。どこかに流すという訳ではないような。時々海の底の土を耕さないと水が浸透しなくなるそうです。

でもただ穴を掘ったのでは庭の景観としてイケてません。なので手水鉢を添えたりして。ついでに手水鉢の水も流せるし、上手い具合に落としどころを見つけたなぁと思います。

 

雨が降りだして、庭の見え方も一変。鶴石がヌラッと光ります。庭に雨、風情が増します。

 

庭は部屋を掃除するのと同じレベルで、とっても清潔でした。枝の透かし具合から見ても庭の管理も相当きちんとなされています。だからこそ、こんなにも一体感があるのです。

座敷は埃一つないのに、庭は生い茂りまくりで、折角の庭石も見えなかったらだったらどうでしょう。そこまで極端でなくても、一か月間なにも掃除していない庭と、昨日今日掃除した庭の差は、誰が見ても分かりますよね。そこなんですよ。

個人邸で毎日の掃除は大変でしょうが、こちらのように公開している庭だったり、モデルハウスの庭とか、お商売をされているところの庭は、室内と同じ程度に掃除して季節ごとに整えないと、全てが台無し。ちぐはぐに見えるので、気を付けたいところです。

 

見学を終えて外に出ると結構降っていて、お陰で足もとがずぶ濡れ(´;ω;`)ウゥゥ

 

受付にはオジサマ3人が座っておられ、希望すれば各部屋の詳しい解説をして下さいます。タイミングがあえば家猫がひょっこり顔を出してくれるかも。私は台所の吹き抜けあたりでみました(^^

撮影も自由。通年予約制で公開されているそうですが、今月一杯は観光協会主催の特別公開なので、予約なしですぐ見せていただけますよ。

 

 

京の美仏と庭巡り

これまで寺社へは「庭園鑑賞」目的で訪れることが多かったのですが、先日は「美仏鑑賞」という私にとっては新鮮な切り口で、お隣の京都へ行ってまいりました。というのも、珍しく一人ではなく、同伴がおり、彼女が仏像好きだったので。

今日は、この時であった美仏と、窓超しに見る庭園の画像をご紹介します。

 

+++++++++++

 

まずは龍谷ミュージアムで開催中の「因幡堂平等寺展」へ。

20体の様々な仏像を鑑賞した中には、なるほど確かにお顔やお姿がひときわ美しい仏像があります。平安時代や鎌倉時代の作られた当時は、どれほど煌びやかだったのでしょうか。それを想像するとさらに凄みが増します。

好みの問題もあるかと思いますが、私は鎌倉時代作・平等寺所蔵の「如意輪観音座像」に見とれてしまいました。ご存知の方も多いと思いますが、頬に手を当て右足を立てて座られた観音像です。こちらは、今まで出会った中でもとりわけ優美な観音様でした。

仏像の多くは文化財指定になっており、当然ながら撮影禁止。画像をご紹介できないのが残念です。

 

西本願寺の前にある龍谷ミュージアム。色々な視点から仏教芸術を掘り下げておられる。建物もカッコよくて好きな美術館です。

 

ところで、美術館や博物館などで「○○寺の仏像」という展示があるとき、いつも疑問に思っていたことなんですが、この像に魂って入っているの?運搬展示の際には当然魂を抜く儀式をされるでしょうが、やっぱり抜いたままなの?どっち?

思い切って係りの方に聞いてみました。すると学芸員に確認しますとのこと。しばらく待っていると・・・

展示後ちゃんと法要をして入れています、とのことお答えでした!ということは、毎日お勤めもされているんでしょうか?そこまでは伺えませんでしたが、ただの木像状態の展示も多いそうですから、聞いておきながらびっくりです。平等寺に行けなくとも、こちらでご縁がいただけるのは有難いことではないでしょうか。

そんなことで、手を合わせつつ鑑賞しました。

 

++++++++++

 

さて次は一旦京都駅に戻って、市バスで10分程走ったところにある泉湧寺へ。

「京都傑作美仏大全」という本があって、その巻頭に紹介されていたのが泉湧寺。塔頭寺院あわせるといくつもの美仏が祀られていると紹介されていたお寺なんです。

 

泉湧寺の門。この門の奥に塔頭寺院、神社、さらに学校など多くの建物と庭があります。造園屋さんの姿があちこちにあり(画像真ん中に立ってる方もそう)剪定に忙しそうでした。

 

天皇家ゆかりのとても大きなお寺で、神聖な気が漂う境内は、折しも青モミジが見頃です。少しの間だけ降った霧雨が、より一層緑に深みを与えていました。

こちらでは楊貴妃観音像や薬師三尊像はじめいくつもの美仏が祀られていますが、中でも運慶作の本尊・三世仏がものすごーく美しかったです。

天上に描かれた狩野探幽作・雲龍図の迫力もさながら、黄金に輝く仏像三体それぞれが神々しいばかりのイケメンなんです。特に斜め横からみたお顔が!仏像に男女の性はないとか言いますけれど、あえてイケメンと表現させてもらいます。同伴の彼女は涙を流して感動していました。

 

+++++++++++

 

とりあえず、美仏のお話はこのあたりでおいて、ここからは庭のお話を。

泉湧寺の塔頭のひとつで、雲龍院のお庭を拝見しました。やはり皇室と深い縁がある故に、高い寺格を持ち、別院とも称される寺院です。

こちらのお寺は庭というより窓が有名。京都にいくつかあるという「悟りの窓」。有名なのは源光庵ですが、ここにもあるのです。

 

徳川慶喜寄進の石灯篭。砂紋が天皇家の紋章である菊の御紋になってる!

 

中庭。水鉢にもやっぱり天皇家の御紋「十六八重表菊」が。美しい水鉢ですね~。この下は水琴窟になっていました。凝ってます。観光客の話し声がしなければ、そのままで聞こえますが、付属の竹に耳を当てても聞くことが出来ます。

 

手入れや掃除が隅々まで行き届いたお庭。サツキの花が色を添えていました。

座敷の窓や障子などの造作がとてもモダン。そしてそこから見える、庭の眺めが本当に素晴らしく、まさに絵か掛け軸かのようです。建物と庭との関係は、かくあるべき!と改めて思う景色でした。

 

障子が少し開かれて、庭木がいい感じに見えています。

 

書院の窓が「悟りの窓」と呼ばれる。予想より小さい窓でした。窓ありきの庭、でしょうか。

 

蓮華の間の障子窓がまた粋で。四角い障子窓から見えるので「しきしの景色」と呼ばれています。座る場所によって全部違う景色にも成り得る。

 

改めて障子という建具の秀逸さを感じます。ほんのりとした明るさを保ちながら、同時に自由に視界を閉じる(制限する)ことが出来る。だから余計な景色を省きポイントで庭を見られます。カーテンやブラインドと違って、枠がはっきりして、枠そのものにもデザイン性があり、まさに額縁そのもの。故に絵に見えるのですね。しかも季節によって景色が変わる絵、です。

これは寺院だから、という訳でもなく、一般住宅でも取り入れることが出来そうです。

 

 

GW花巡り

本日は端午の節句。朝から室礼の支度を・・・といっても、大人ばかりの我が家では、玄関に菖蒲の葉を飾るだけ。

菖蒲はよくお風呂に入れたり、屋根に葺いたりしますが、こうして飾るだけでも邪気を祓うそうです。

 

 

さて、前回に続き、GW中の花巡りレポートです。

私は連休中は例年、どこかしらのお庭や花園を訪れるようにしていますが、今年は「砺波チューリップフェア2019」へ行ってまいりました。

 

臨時駐車場がいくつか設けられていましたが、それでも大渋滞。1時間程待ってようやく会場入り。

 

富山県の県花はチューリップ。砺波市を中心に栽培が盛んです。風土が意外にも栽培に適しているようで、その歴史は古く大正7年(1918年)から。やがて日本一の出荷量になるまで発展しました。

では、会場の風景をお楽しみください。

 

こちらの会場は約26ha。そこに216品種700万球ものチューリップが植えられているそうです。地植えだけでなく、池に浮かべたりもされてて、見ごたえあります。

 

出ました!「令和」文字(^^ 会場にはここ以外にもまだあって、たくさんの人々が楽しそうに写真を撮っていましたよ。

 

植栽デザインは、鮮色使いや地上絵、一種植えと言ったフラワーパークの王道的テクニックが満載です。量と色のパワーで魅力する力技。どちらかというと男性的な雰囲気を感じると言いましょうか。でもそれが、老若男女一番ウケるのは間違いないことも実感。

いつも新しいデザインを求めている私は、チューリップを主役とした斬新な組み合わせも見たかったなぁと思っちゃったりして。我儘かな。

雲一つない晴天で、絵ハガキみたいなの撮れました~。忘れな草とチューリップは定番の組み合わせ。美しい。

 

立体的に設えられている花壇に色鮮やかなチューリップ。物凄い迫力です。遠くからでもよく目立つ色目で人寄せ効果抜群でした。

 

チューリップの草丈は、大きくてもせいぜい50~60cm程なので、普通に植えると、見るときに屈まねばなりません。でもこちらの会場では、花壇を丘のようにして立体的にしたり、平地の場合でも30cm程高さを設け、さらに土を30cmほど盛って植えられていました。

そうすると、GLから100cm近くの高さに花が咲くので普通に歩きながら鑑賞できるようになります。もちろん屈んで見るような場所もありますが、多く屈んだ印象はありません。一つ一つ美しく咲かせるテクニックも凄いけれど、こういう細かな配慮も素晴らしいと思いました。

 

芝桜の丘で。可愛いお子さんと満開の花、絵になるなぁ~(^^*

 

最初の予定では、高山市から白川郷に行くつもりで、2度トライしましたが、大・大・大渋滞で結局辿りつきませんで、富山まで足を延ばすことにしたのです。

白川郷も素晴らしかったでしょうが、この量のチューリップを見ることはなかなかないので、結果オーライ的な旅となりました。

 

 

桜の季節を堪能

いつの頃からでしょう。桜が咲くのをこんなにも楽しみにするようになったのは。

子供の頃は、特別な気持ちで桜を愛でた記憶がありません。たぶん20代でも、結婚するまでは、今ほど感慨深く見ることはなかったような。それが年を重ねるごとに、桜、桜、あぁ桜。春になると、この花を一体何度愛でることでしょうか。

思うに、花をただただ眺めるだけ、という行為は大人でないと出来ないかもしれません。子供はきっと飽きちゃうもんね。

 

 

お花見といっても、私の場合、大抵は一人花見なので、何にも持たず見物することが多いです。家族と一緒の時でも、せいぜいが缶ビールと軽いおつまみ程度かな。

そういえば、こんな話を読んだことがあります。

篠田桃紅さんの著書「桃紅105歳好きなものと生きる」にある江戸時代の富める町人の豪勢なお花見についての一文。

彼らは五段の重箱を下げてお花見に出かけていました。そして桜の木の枝から枝へ紐を渡して、着て行った贅沢な羽織や打掛をかけて、その中で酒盛りをしたそうです。贅沢な着物と絢爛たる美しい桜、それが当時のお花見の風情でした。外を歩く人々は、その贅沢さに目を奪われ、隙間からお重に盛られた料理を覗き見たに違いありません。

一夕の夢物語として、彼らは消えてしまうことにお金を遣うことを惜しまなかったようです。ばかばかしくてもったいないと言えばそれまでですが、そういうことを面白がり、優雅に楽しんでいました。

桃紅さんは言います。「文化と言うのは、ばかばかしさから生まれます。今の人は優雅な楽しみ方をしているでしょうか」

うーーーん。私のお花見に優雅さは欠片もないけれど、あんたは虫か!という程のばかばかしさで、花を追いかけているのは間違いないな(^^;

 

+++++++++++

 

お花見今季3回目は、高島市の海津大崎へ。

こちらは桜の名所100選に選ばれた県内でも有名なお花見スポットなんですよ。ウチからは車で1時間半ほどかかり、桜の時期はかなり混雑するらしく、これまでなかなか行く機会がありませんでした。

今回は、夫がたまたま平日に休みが取れて、空いてるんじゃない?と予想して、行ってみようとなったのでした。

 

滋賀県高島市にある海津大崎。琵琶湖に突き出した岬で観光船の発着場もあります。

 

同じ琵琶湖ですが、湖北の方が水が澄んでいます。

 

予想通り車の渋滞もなく駐車もできました。

晴れたのは良かったけれど、花冷え。結構風が冷たくてー!やはり湖北(琵琶湖の北側のことをこう呼んでいます)はまだ寒かった。

それだけにまだ花が結構残っていて、満開から一歩だけ進んだくらい?満開といってもいい感じで、道いっぱいに枝を伸ばしてトンネルになっているところが素晴らしかったです。湖と桜の景色も評判通り。とても美しくてウットリ。

いくつか画像をお楽しみください♡

 

琵琶湖岸に沿って約4kmにわたりソメイヨシノが咲き誇ります。

 

陸では桜のトンネル、そして湖からも楽しめる特別な場所。

 

そんな桜の名残りをウチでも楽しみたくて、お土産に桜餅と桜の塩漬けを買って帰りました。

桜の塩漬けは、まずは桜茶に。茶碗の中でふわっと花開いて、またまたお花見が出来ます。

 

晩ごはんのあとは、桜茶と一緒に桜餅をいただきました。桜茶は桜の塩漬けをサッと洗ってから白湯を注ぐだけ。桜の香りとほんのり塩味を感じます。

 

桜の塩漬けって、7分から8分咲きの八重桜で作るんですってね。だからこんなにきれいに色が残るんでしょうか。

つづいて作ったのはあんぱんです。

見た目も可愛いし、甘い餡と塩味がマッチして美味しく焼けました(^m^*

 

 

桜の塩漬けを使って、あんぱんを焼きました。半分はクリームぱんです。

 

休日の朝ごはんにいただきました。

 

桜の塩漬けはまだたくさんあるので、次は「桜おこわ」を焚いてみようと思ってます。

関西の桜はもう見頃を過ぎつつありますが、私のお花見は食卓でまだ続きます。