9月のお出掛け

9月を振り返ると、千葉で台風による大きな被害が出たり、世間様は消費税UP間近とあって何だか騒がしい。私自身も仕事では肉体労働が続き、3連休は休まず出掛けたし、煩わしい家事も黙々とこなし、習い事のお稽古もしと、かなりのハードワーク月間でした。

丈夫だけが取り柄の私でも、さすがにバテるんじゃ?と覚悟していましたけれど、それが案外、元気です。あれ?

やっぱり丈夫なんだなぁと思いつつも、植物や美しいもの・元気な人から良い波動をたくさん浴びているお陰かしらとも思います。

今日のブログは撮り貯めたお出掛け画像と、久しぶりにランチやお茶にオススメのお店をご紹介しまーす。

 

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まずは美仏として名高い「帝釈天」に会いに東寺へ。

今年春に東京国立博物館で開催された東寺の展覧会で、話題をさらったあのイケメン仏像です。(興味ない方には全く通じない話でしょうが^^;)

東寺講堂には、平安時代前期に作られた密教彫刻の最高傑作である立体曼荼羅が納められており、帝釈天はその左端におられます。実際に間近で見ると本当に美しいお顔です。

仏像は人間の顔に似せて非なるものが多いけれど、帝釈天は凛々しい男性の顔そのもの。だから感情移入して見てしまうのですね。確かに噂に違わぬシュッとした超イケメンです。跨っている象さんがユーモラスな表情で、しかも小象のような大きさで、帝釈天とはアンバランスな感じがするのは私だけ?

 

まだ暑さの残る9月初旬。東寺へ。

 

今年は仏像ガールと一緒に色々な美仏を見て参りました。個人的な好みでいうと次の通り。

  • 1位:如意輪観音(平等寺)優美。今まで見た如来輪観音の中でダントツ。
  • 2位:三世仏(泉湧寺)三体ある全てが美しい
  • 3位:帝釈天(東寺)いわずもがな

帝釈天を3位にするくらいだから、1と2がどれほど美しいか、お分かりか???2と3は行けば確実に見られますが1は分かりません。

 

さて、東寺に行ったのならランチにおすすめのお店はマグロ専門店「再来」さんです。

東寺の傍にある京阪国道口の交差点から徒歩5分ほどで着きます。

京都でマグロ?とお思いでしょう。専門店とあってリーズナブルにいただけるお店なんですよ。

道路からはマグロの切り身がずらりと並んだショーケースしか見えないのですが、奥にお座敷があります。失礼を覚悟で申しますと、お洒落なインテリアとか京都らしい雰囲気とか、そういうのではないです。地元の方やお仕事途中の男性がランチに寄られているような感じ。平日だったので席にも余裕がありましたが休日だと混んでそうです。

メニューはマグロ丼はもちろん、フライやお刺身などついたバリエーション豊かな定食がズラリ。私は色々食べてみたくて、お高めの(といっても1500円程です)マグロづくし定食にしました。

お刺身には大トロや中トロも混じっているし、ユッケ風、フライあり、煮込みありで、とにかく食べるのが楽しい。新鮮なのは折り紙付きで、本当に美味しかったです。

 

再来さんにて。(手前)たしかマグロづくし定食とか、そんな名前だったような。色々な味つけで楽しめました。(奥)鮪フライ定食。これで500円ちょっとだったか?

 

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次は地元の美術館へ。

滋賀で私の一番好きな「佐川美術館」で「名刀は語る」展を見てきました。(この企画展は終了しました)

近いので年に数回訪れるヒーリングスポット的存在。いつもは平日に行くところ、珍しく休日に行ってしまい、しかも刀剣女子らしき方も多く、結構混んでいました。

 

佐川美術館での企画展

 

刀の美については、はっきり言ってよくわかりません。でも不思議。恐ろしくてウチには置くところなんかないけれど、たまに出してコソッと見ていたいという刀はありました。

自分でも変だと思うけれど、いつも美術品の前に立った時、自分が身近に置くとしたらどれかな?って考えながら見ています。もちろん買えるはずがないけれど、そう思ってみると、美術品がリアルに感じられる気がするの。

それに匠の技という観点で見ると、かなり興味深い世界です。刀だけでなく、鞘やなんやかんや関連品も良く見ると、とても凝っています。細かなところに途轍もない装飾が施されているのを知り、刀とは単なる武器ではないことが分かります。

展示の中には鎌倉時代とか、すごーく昔の刀があるのですが、それが錆もせず今なお輝いているのは、よくよく考えれば凄いこと。令和になるまでの数百年間、ずっと誰かの手によって磨かれ続けてきたという訳です。一本の刀にどれだけの人生が関わってきたことでしょうか。それを思うとゾクッとします。

さて、展覧会を一通り見て、ちょっと休憩したいときは、ミュージアムカフェがオススメ。もしも場所を変えたいときは、琵琶湖岸添いを2、3分走ってホテル「セトレ マリーナびわ湖」さんなどいかがでしょう。

 

凝った外観の「SETREマリーナびわ湖」琵琶湖大橋の袂にあります。

 

ダイニングルームからはモチロン琵琶湖が眺められます。地元の食材を使ったイタリアンは美味しくて接客も感じいいです。

 

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最後は名古屋。名古屋公会堂でミュージカルを見てきました。

実はそのミュージカルに身内が出演してて、応援も兼ねて観てきました。

久しぶりに見るエンターテインメント・ショーで凄く感動しました。出演したその子が踊る場面に目が釘付けで、ほとんど回りの人とか見えてない感じ。誇らしいやらウルウルするやらで忙しいwwwあっという間に終わってしまいました。

 

ランドスケープデザインがしっかりしています。緑豊かで木々の大きさに歴史を感じますね。奥に見えているのが名古屋市公会堂。

 

名古屋公会堂は鶴舞公園の中にあります。明治42(1909)年に開園した歴史ある素晴らしい公園です。こんな素敵な公園が街中にあるなんて本当に羨ましい。

とにかく広いので休日でもゆったりと過ごせそうです。小さなお子様専用のスペースや図書館があり、スポーツ施設も新しくなったみたいでこれがまたカッコいいんです。人工芝のグランドが緑緑していました。

公園を散歩した後カフェに寄るなら、園内にある「nunc nusa」さんが近くてオススメ。ケーキが美味しいです。私の好きなタルトがいっぱいありました。

 

古民家カフェのようで内装は昭和モダン風。いただいたのはピスタチオのタルトです。バランスのとれたお味でさすが。器もお洒落!

 

私が遊びに行くところといえば美術館とか寺院とか庭とか、ばっかりね(^^;

本当ワンパターン。

もちろん映画とか買い物にも行くけれど、テーマパークのような人込みは苦手。TDLにも行ったことがないっていうと、みんなに驚かれます。たぶんこれから先も行かないだろうな。USJくらいは行こうかしら?

 

 

坪庭作庭物語3-竹細工と照明

京都市山科区にあるパスタ&甘味「ゆる音家」さんでの作庭記を3回に分けて書いています。

先週9日から改修工事に着手、13日に無事お引渡しが済みました。しかし、まぁ。あの時の暑さったら!今週の涼しさからは想像できない猛暑日続きでした。たった1週間しか違わないのに、体感温度が違い過ぎて、随分と時間が経ったような気がします。

 

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さて、今日は最終回。竹細工と照明について、です。

初めに竹細工を。竹製品と書くべきか迷ったけれど、手仕事なのでやはり細工かなと思いまして。

このお庭用に、ディアガーデンの近くにある老舗竹材店「(有)竹松」さんにオーダーして、簾と縁先手水鉢用の柄杓セットを作っていただきました。自社で竹林を育て、伐採から製品製造、販売、現場施工まで一貫したサービスを提供されている今となっては稀有な会社様です。私のお願いする仕事は専ら小さなものばかり、でもニコニコと請けてピシーッと仕上げて下さるの。ホント頼りになる存在です。

簾は町家では必須アイテムと申しましょうか。夏の間だけでなく、プライバシーを保ったり建築の装飾として年中吊るされる場合もあります。ゆる音やさんは常設でとのご希望で、竹松さんに相談しましたら、蒲で織った「蒲芯」の簾を薦めてくださいました。

まずは、Before & After の画像を。

比べると見え方が一変したように感じますが、如何でしょう。

 

改修前の様子。客席に西日が入って眩しいということで簾を吊り下げておられました。古くなっていたので取り換えを提案しました。

 

改修後。室内から見る。新しく蒲芯の簾を吊ったところです。シャープですっきりとしたラインのお陰で、庭がより端正な雰囲気に見えます。

 

蒲芯の簾は、よくある葭の簾とは違って、空洞はなく中まで繊維が詰まっています。ゆえにとても丈夫で遮光性や断熱性に優れています。節がないので見た目にスッキリとしていますし、色も柔らかなベージュで品がいい。ぺらんとした感じではないので常設でも違和感はないです。

ただ、中が空洞ではないので、湿気には弱くカビが生えやすいというデメリットもあります。梅雨や台風などの時は巻いておくといいでしょう。

 

簾を場に合うようオーダーメイド。色目が柔らかいです。

 

日除けの役目を果たせるように、室内から確認しつつ何度も修正しながら吊りました。ジャストな位置はここ!

 

軒下には、垂木に竹竿を掛けられるようなものが既に打ち付けてありましたが、そこにそのまま吊ったのでは、上手く機能しないのです。

せっかくオーダーメイドで作ったのに、ちょっとした違いで眩しかったら悔しいじゃありませんか。なので、ちょうど西日が照り付ける時間帯に客席に座ってみて、もろもろ微調整しながら吊りました。

 

縁先手水鉢に作ってもらった手酌を置きました。ピッタリです。実際に使う訳ではないけれど、あった方が雰囲気出るよね~。

 

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次は照明について。

こちらのお店「ゆる音家」さん、営業時間は夜9時までです。お庭は元々、投光器を上手く利用してライトアップされていましたが、折角の改修工事のタイミングです。新たにライティング計画もご提案しました。

考えましたのは灯籠の存在。2基あるのですが、その火袋に灯さずしてどこに灯すんねん!ってね。前々から、いろんなお庭で火袋に灯さずに灯籠全体に照明を当てているのを見て、絶対おかしいと思っていたの。だって照明器具に照明を当てているんですもの、変ですよね。それで、灯籠を主役にするライティング計画を立てました。

ところが実際探してみると、火袋に入れられる照明器具はなかなか見つかりません。唯一手に入りそうだったのがタカショーさんの製品。それが低電圧12Vの商品だったので、他の照明もそれで統一することにしました。

火袋に入る小さな照明は、見えても一向に構わないデザインではありますが、やはり窓にシェードをかけた方がより雰囲気が良くなると思い作ることにしました。それで、当然職人さんにやってもらえるもんだと思っていると「それはマブチさんの仕事やろ」とあっさりと蹴られてしまいました。軽作業だからそれ位やりなって感じで。(´;ω;`)ウゥ・・・

「仕方がない。いっちょ頑張るか」と、材料を揃え持っていきました。枠の4隅の精度が自分では出せなかったので、お店の内装工事に来られていた大工さんに頼んで、木をスパッと切ってもらい(忙しいところ無理くり。優しい方で嫌な顔せずやって下さった。有難うございます)あとはちょこちょこ削って、何とか出来ました。

 

木枠を寸法通り作ったのはいいけれど、灯籠はそもそも石なので地が結構ボコボコ。合わせるために掘っているところ。

 

半透明のポリプロピレンを切ってタッカーで留めたら出来上がり。

 

火袋の窓に押し込こむ。上手くはまってくれた。格子も作れたら良かったけれどそこまで根気がなく。でも照明も点いたらいい感じ~。

 

トランスです。既存の外部コンセントが庭の近くにあり上手く設置できました。このトランスは照度センサー内臓なので、点灯や消灯の調整が出来る優れものです。

 

ライティングも微調整が必要です。日が暮れるのを待って照明の角度チェックをしました。

いかに照らすか、よりも、いかに美しい明暗を作るか?いかに綺麗な影を作るか?が意外と大事です。とはいえ、灯籠の場合、暗い所で灯るとちょっと怖い感じがするので、特にこちらのお店の大多数の客層である若い女性にはそう感じる気がして、ベースライトを明るめにしました。そして影は部分的に作って奥行も出したつもり。

下の画像は、まだ調整の途中に撮ったものですが、灯籠の灯りってこんな感じです。

 

灯籠が本来の役割を果たしています。LEDですが電球光でしかも時々揺れるよう作られているので蝋燭っぽいです。その他に全体をふんわり照らすためのベースライトを2基仕込んでいます。

 

3回にわたってお送りしました作庭物語。物語なだけに、結構ボリューミーな内容になってしまいました。こんなに長くて、まともに読んでくれている方はいるんだろうか???画像を見ていただくだけでも嬉しいです。

庭作りの裏側、こんなことを考えて作りましたって、お客様にも1から10までお話しないのですが。大体いつもこのような感じで、パートナーの造園屋さんはじめ、色々な方々のお力を借りて、私なりに思い入れたっぷりに作っています。

お庭が出来てからも、まずはメンテナンスの方法や照明器具の扱い方をお教えしたり。何か困ったことが起こりましたら駆けつける、ご相談に乗る、管理を丸ごと請け負うとか、親しくお付き合いが始まります。

庭は作庭4分守り6分といいます。要は今、私達はベースを整えたに過ぎません。これからが本当の庭作りなんです。

 

次回はブログではなく、Works(施工例)で、ブログ掲載した画像以外の、選りすぐりの画像をまとめて、お見せしようと思います。UP出来ましたらお知らせします。どうか引き続きご覧くださいませ。

 

 

坪庭作庭物語2-植栽

京都市山科区にある「ゆる音家」さんでの作庭記を3回に分けて書いています。先週9日から改修工事に着手、13日に無事お引渡しが済みました。

今日は2回目、植栽工事について。

まずは改修前の様子を↓

 

左奥がモチノキ、右奥にツバキ、右手前がシダレモミジ、そこここに実生の木々が育っています。

 

高い木塀に囲まれた幅2.7m奥行4m程の坪庭です。

元々植えられてあったのと思われるのはシダレモミジとツバキで、モチノキやナンテン他低木は実生かな?と想像され、どれも勢いよく育っていました。これまではオーナー様が剪定されていたそうで、どう整えたら良いのか判断がつかない場面もあったことでしょう。バランスと今後のお手入れのことも考慮して、モチノキとシダレモミジは残し、その他は思い切って伐採することをご提案しました。

木を処分するという行為は辛く、なかなかご自分では出来ません。私も木に対しては気の毒に思いますが、庭を良くするために決断を促すのも仕事です。その代わりといっては何ですが、切るときは前もって木と話をし、心を込めてお清めをさせていただいております。

 

さて、その残したモチノキのことですが。樹勢が強くなかなかの強者です。

伸び放題だったので、思い切って切り詰めさらに枝を透かしてもらいます。これだけで見違える程良くなりました。次に石組みをやり替えるために根元を囲んでいた石をはずすと、太い根がしっかりと地面をつかんでいました。樹勢が強いのはこの根張りのせいでは?と職人さんがおっしゃるくらい立派な根です。そこで、いくつかの根は切るとしても、太い根は思い切って見せるよう納めることにしました。

根の周りに苔を貼り、石を根が抱きこんだように据えてみると、まるで山に生えているような自然な感じになりました。この部分、物凄く気に入っています。

実生の木、切っても切っても生い茂る、持て余していた木が、どうでしょう?!堂々とした幹と根を魅せて、まさに主役に躍り出た感じ。私までもが何故か誇らしい気分です。

 

生命力溢れる根を見せることにしました。

 

横にかなり伸びていた根はどちらにせよ切れないし、石はそれに沿わせるようにしか据えられない。そのせいで延段が短くなってしまったけれど、これで良かったかなと。あるがままを生かすのもデザインです。

 

実は設計の段階で、モチノキの周りには石を据えないつもりだったのですが、根を表しで作ることまでは考えもしませんでした。

作りながら、あーでもないこーでもないと職人さんと話をして、状況にあわせてデザインを変えていく方が結果的に良くなることが多いです。だってそれがその庭の個性になるから。勿論お客様とお約束した所は勝手に変えられませんが。

それにその方が作り手も面白いと思うの。頭の中で考えただけの図面通りに作ったってしようがないんです。

そうして楽しんで笑いながら作った庭はいいオーラが出る気がするの。本当に。気持ちが植物にも伝わるからかな?

 

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さて、その他の植え込み。

坪庭はもともと茶道の露地の体裁を取り入れて作られましたが、広さが限られているので、露地が求める「市中の山居」といった風情に仕上げるのは難しいことです。でも出来るだけ自然に見えるように心掛け植物を配しました。

景石や飛び石・灯籠の傍に、まるで種が落ちて芽吹いたかのように、そしてそれらが自然に増えたかように植えていきます。石はそれだけでは厳しめに見えてしまいますが、植物が添うとなんと穏やかに見えることでしょう。

 

石に添わせるよう配置。ジャノヒゲはその線の美しさを見せたく細かく株分けして植付け。艶のある葉を持つヤブコウジ、ともに常緑です。

 

左のシモツケは落葉低木ですが合うと思ったので植えました。ヤブコウジはあちこちに。冬に赤い実を付けます。

 

露地の植物はモミジ以外は常緑植物を主として用います。派手な花、香りの強いものは用いないなど、いくつかセオリーがありますが、町家の場合はそこまでこだわらなくても良いかと思います。

こちらで元々育っていたハラン、ベニシダは移植。そして伐根したツバキの名残りとしてコンパクトに育つカンツバキを入れました。今まで赤い花を楽しんでおられたそうなので。無くなるとやっぱり寂しいものですものね。

これからは、より愛でやすいところで咲いてくれます。

 

雪見灯篭はここではちょっと異質な存在なので、シダレモモジで覆って主張しすぎないように。そして足元にカンツバキ。石とのバランスを見ながら緑を足していくと、庭に生気が満ちてきます。

 

仕上げにハイゴケを全体に貼りました。

ハイゴケはスギゴケやスナゴケよりも育てやすく、乾燥しても直ちに枯れることはありません。密なマット状になると雑草が生えにくくなります。

苔には植物の根にあたるものがなく仮根というもので石や土にへばりついています。植付け時はそれがないので目土を被せます。重しになり苔を動きにくくすると共に、乾燥から守るのです。

ですので、仕上がったばかりは、苔よりも目土の方が目立ってしまうのは仕方がないことです。数か月水を切らさないように育てると次第に青々としてきます。

 

ハイゴケを貼っていただいているところ。手前は既に目土が被せてあります。

微風が揺らす葉擦れの音、木漏れ日の光が苔の上で揺らぐ様、ほの暗く清浄感ある風情・・・。

そんな庭が、美味しい食事のひとときを、更に印象深くしてくれることを願います。

 

 

 

次回は、竹細工と照明について書きます。

庭の雰囲気を盛り上げる演出。最後まで手抜かりはありません。とても楽しくやらせていただきました。

 

 

坪庭作庭物語1-石組み

先週9日から作庭しておりました京都市山科区にある「ゆる音家」さんのお庭が完成しました。

ゆる音家さんは、風情ある町家でパスタや甘味がいただける女性に人気のお店です。内装を一部を直されるのに合わせて、坪庭の改修をご依頼くださいました。

オーナー様の掲載許可が下りましたので、今日からその作庭の様子を3回にわたってご紹介します。

作庭中は猛暑日続きで、職人さんにはご苦労を掛けましたが、とても丁寧な仕事をして下さったお陰で上手くまとまりました。そんなディアガーデンの庭作りをじっくりご覧いただこうと思います。よろしければお付き合いください。

  • 1回目:石組み
  • 2回目:植栽
  • 3回目:竹細工と照明

3回書き終えた頃に、ブログ掲載とは違う画像で施工例をUPしますので、そちらも是非ご覧くださいませ(^^

 

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さて、坪庭作庭物語1回目は、庭の骨格を作る石についてのあれこれ。

お庭は客席のある部屋に面する幅2.7m奥行4m程のミニマルな空間です。オーナー様のご希望は、石や灯籠・手水鉢などを出来るだけ生かして作り直して欲しいとのことでした。

そこで、手水鉢や灯籠はあるべきところに据え、更に日々のメンテナンスをやりやすくするために庭の中をスムーズに歩けるような石の使い方を提案しました。飛石や延段、霰こぼしなどは景色づくりにもなります。いわゆる用の美、ですね。

 

改修前の坪庭の様子。実生の木々がすくすくと育ち、手入れが追い付かない様子。手水鉢や灯籠もそれぞれ2つづつあり余白が少なめでした。

 

木塀に囲まれているので、資材の出し入れが大変でしたが、作業効率を優先し、除けられるものは全て一旦外に運び出すことに。

そしてある程度整理できたところで、奥の大き目の石から、順に据えていきます。

 

とにかく作業スペースがなく重機を入れるのも困難。2人でも動かせない大きさの石にはチェーンブロックが大活躍です。

 

主だった石はどのように使うか予め決めていましたが、それ以外は職人さんと相談しつつ、でもある程度はお任せでどんどん据えてもらいます。

これまで土留め石として使っていた石が沓脱石にぴったりだったり、何気なく置かれた石を役石に昇格させたり、使いようによってこんなにも違う表情を見せてくれるものかと驚きます。石を回してどこを見せるのか?次の石をどう添えるか?そういうことを考えるのが楽しいのです。

大変な作業ですがとてもワクワクします。

 

石組みを再構築。既存の石のほとんどを再利用して据え直しました。石の欠け(欠点)は植物でも補えます。後のことも考えて据えているの。出来上がると全てが染んでいい感じになりました。

 

据え直した沓脱石、前石、二番石。2番石は新しく入れた石です。犬走りは三和土風にし一二三石で飾りました。犬走りの端っこをまあるくして柔らかい感じにしています。

 

大きな石組みは力持ちの職人さんに頼り。でも小さな石を並べるのは「マブチさんの仕事な」と強引に振られます(^^;監修する立場とはいえ、私も何かしら手を動かさずにはいられない性分なので、そこは喜んで~。

小さな石というのは、三和土の模様の「一二三石」のことです。

一二三石とは、土間の表面に小石を一つ、二つ、三つとランダムに散りばめるもの。以前何かで見て(修学院離宮かな?)この可愛らしい模様は、女性のお客様の多いお店にピッタリじゃないかと思いご提案しましたら、オーナー様も賛成して下さって実現する運びとなりました。

土のスペースを少なくするご希望もあって広めに犬走りを打ち、それを三和土風にしてもらいました。本物の三和土は砂と石灰・にがりを混ぜたものを、何度かに分けて叩き固めますが、今回は工期が短いため効率よく作るために、パートナーの造園屋さんが白セメントに色粉を混ぜて作ることを提案してくださいました。前もって色々なパターンの配合で小さな試作品をご用意いただきまして、ここに一番合いそうな配合で打設しました。

三和土がほどよく固まりはじめたら、那智黒石を埋めていきます。修学院の場合は色石を並べているそうですが、私は黒一色にしました。並べ方はほとんど直観というか、手の赴くまま適当に。でも時々全体を見ながら、バランスを取って並べたつもり。とはいえ、一定の間隔はつまらないと感じたので、敢えて中央に寄せ気味で端は疎らに。セオリーはあるかもしれないけれど、まぁいいか。

小石を埋め込むとどうしてもそこが窪むので、表面の仕上げの刷毛引きがムラになってしまいます。乾いてから補修をかけると、思いがけず古美た風合いになりました。

 

大雨の時、庭に水が溜まらないよう暗渠排水工事中。黒いパイプは透水パイプで、近くのU字溝に排水するよう繋ぎます。モチノキの樹勢が凄いので、掘るついでに根の整理もして下さいました。

 

木塀の足元の処理とか、水はけを良くする仕掛けとか、見えない部分の処理も出来る限り施しました。立水栓を埋設してスッキリさせて、それも店内から見えないように景石で隠したり、とにかくいろんな仕舞いを細かくすると、庭の完成度が上がります。

あと、私の勝手な遊びで、ハート型の石を庭の中に仕込みました。

石を仕入れに行ったとき、何気に見つけてしまったのです。女性ウケ狙いで使うしかないでしょ(^m^* 実は私も以前、高台寺でハート型の石を見つけて何故かちょびっとテンション上がった経験があったのでね。

嬉しそうにハート形の石を抱えてきた私を見て、職人さんは呆れたような顔で「それ、ほんまに持って帰るん?」と何度もしつこく聞かれましたが「絶対に失くさんといてね!」とお願いして、特別梱包で持って帰ってもらいました。それで現場に入れる直前に「失くした~」とか言って脅かすんですよ。もぅー。

 

石を仕入れたときの様子。こんなに一杯ある石の中で、たまたまハート型で手頃な大きさの石を見つけてしまいました。

 

でもね、いくら何でもこれ見よがしな感じでは使いたくなくて、よく見たら「ひょっとしてハート?」と思う程度に、あくまで控えめに庭の雰囲気を壊さないよう埋めたのです。

お客様にはサプライズで(ダメだったらはずせるから)完成してからお伝えしましたら「可愛い♡いいですね!お店の宣伝に使おうかな」とおっしゃってくださいました。ムフ、遊び心あるお客様で良かった。

 

この画像の中にハート型の石があります。見つかりますよね??

 

仕上がった庭。全体の半分程が写っています。手水鉢は縁先に据え直し織部灯籠を寄せました。延段が諸事情で計画より短くなってしまったけれど。いろんな石が集まっていい味を出してくれるといいな。

 

ゆる音家さんの改装工事が全て完了されて、現在は通常営業されています。お近くにお越しの際は是非お運びください。

参考までにぐるなびのリンクも貼っておきまーす→コチラ

 

次回は植栽について書きます。

 

 

町家とその庭、住まい方-無名舎(吉田家住宅)

特別公開中の京町家「無名舎(吉田家住宅)」さんを見学してまいりました。

こちら、昔は白生地問屋だったそうで、建物は大店(おおだな)によく見られる「表屋造り」。棟と棟の間に小さな庭(坪庭)が複数箇所設けられているのが特徴で、採光や風通しに問題がある町家建築の弱点を補っています。国登録有形文化財の指定を受けた貴重な建物ですが、現在も住まいとして使われています。

過去メディアで何度も取り上げられたお宅ですから、建物や庭のウンチクは、ウェブ検索すると山ほど出てまいります。ですので、詳細はそちらにお任せするとして、私は住まい方についていいなぁと思った点など書きたいと思います。

 

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暖簾をくぐると、店の間、そして玄関へと続きます。

玄関先は外部空間となっていて、足元には洒落た石貼りが。それが通り庭へと伸びています。ここにある腰掛待合は、茶道を嗜まれるご当主が近年作られたものだそう。新しいものなのに、明治に作られた建物と違和感なく合っているのはさすがです。

腰掛待合とは、お茶事で客が茶席に入るまでの間待機する場所。玄関棟の隣棟にある座敷に炉を切ってお茶室にされています。水屋も押し入れのスペースを上手く利用して設けられていました。

登録有形文化財とはいえ、外観を著しく変更しなければ改修や改装も行うことができるそう。建物を守ることは大事だけれど、住まい手が楽しく暮らすことも大事。吉田家住宅はそのあたりのバランスが素晴らしい。ご当主様の知性とセンスによるものだと思います。

 

玄関の脇にある腰掛待合。こう見えて一番新しい。石の貼り方が凝ってます。

 

玄関で靴を脱いで上がらせてもらいますと、座敷には網代が敷かてれいます。町家独特の夏の室礼の一部で、ヒンヤリとした感触が心地いい。その冷たさは予想以上で「うちにも網代、欲しいな~」と思うくらいでした。

吉田家は季節によって敷物や建具を変えられます。床の間の軸、各部屋の室礼、先ほどの書きました水屋に置かれたものなどは、季節毎ではなく、それはもうしょちゅう変えられているそうです。

お気に入りの美術品や道具類がいっぱいあったら・・・私もそんな風にとっかえひっかえして遊びたい!

 

玄関棟から見る坪庭。向かって右に店舗棟、左に住居棟があり、それらを上手くつなぐのがこの坪庭です。棕櫚竹とシダ、灯籠、手水鉢などが品よく配されています。

 

小判型に繰りぬかれていた手水鉢。商家ならでのユニークな発想ですね。

 

庭は、店と玄関・住居棟の3方に接する「中庭」と、住居棟と蔵の間にある「奥の庭」の2カ所。

そう大きくない空間ですが、灯籠や手水鉢が配され、ちょっとした露地を思わせます。坪庭がこのような形になったのも、茶道の露地の体裁を取り入れたからだと言われています。常緑植物が多いのも露地由来かなと思います。

中庭はあまり日が差さない陰の庭、奥の庭は日当たりのいい陽の庭となっていて、部屋の障子をあけ放つと気圧の差によって風が通る仕組みです。これは皆様もよくご存じのことと思います。

庭を空調設備とするこの仕組みは、暮らしの知恵?それともちゃんとした計算?少しでも涼しさを感じようという京都人の執念のようなものを感じますね。

 

網代、簀戸など夏座敷の室礼のむこうにも庭が見えます。床に敷かれた網代は、冷たい感触だけれなく、水が撒かれたかのように艶があり目にも涼しい。

 

木陰のように薄暗い座敷に座ると、前には明るい庭が見えて、そのコントラストの美しさは圧巻。でもとても落ち着きます。奥の間の簀戸を引いてもらうと、庭がより涼し気に見えました。冬は簀戸が障子に変わるので、庭の光が障子紙を通して拡散され、室内がほわっと明るくなります。建具替えの妙です。

これを行うには、その労力も大変ながら、凄い枚数の建具を収納する場所が必要です。おいそれとは真似できません。更にいうとエアコンが設置できません。窓を開け放っているので虫も入って来るでしょう。冬は恐ろしく寒いといいます。

空調設備に慣らされた私は、この粋な暮らしに憧れつつも、無理やわ~と思ってしまう。それでもこの世界観を取り入れることは出来ます。

庭は敷地の東~東南方向にひとつ、部屋から庭を見えるように窓を大きく開けます。そして対面にも窓を設けます。西〜北側は庭でなくとも木を植えるだけでOK。庭は背景を遮断し、僅かでもいいので常緑植物を植え、お気に入りの照明やオブジェを置きます。庭を歩きたければ小道を作ります。

灯籠も庭石も場に合わせて決まり事のようなものあり、難しく考えてしまいがちですが、要は今でいう照明とオブジェ、と見立ててみましょう。照明器具に凝るように昔の人も灯籠を選び、灯りが欲しいところにいくつも置いたのです。

オブジェがあると、庭に変化が付くし、その人の個性も出ますよね?それと同じように昔の人も、どこそこの石がいいとか好きとか、鶴みたいな形の石がいいとか、どうせなら亀みたいな形の石も合わせて置くと「鶴亀」になって縁起良さそうとか、考えたのですね。可愛いじゃないですか。

 

奥の庭。鶴亀石はじめ京都の名石がゴロゴロ。侘助椿が灯籠をふわっと覆って素敵です(灯障りの木といいます)簾をよく見ると波の模様が。格のある奥の間だけに凝ってますね~。

 

沓脱石は貴重な鞍馬石。奥の縁先手水鉢の足元は大きく掘りとられ海という部分。大雨時は水がここに流れ込むようになっています。

 

昔ならではの素材、施工方法は、それしかなかった当時を思うと、良く考えられているなぁと尊敬する部分が多々あります。

中庭は大雨の時に、どうしても水が溜まりやすい。今なら暗渠排水といって透水パイプを埋め、それを桝に接続し、外部の側溝に流すようにするのですが、昔は違います。庭の一部を深く掘って、地面に傾斜をつけてそこに水が流れ込むようにしています。溜まった水は土に浸透させて、そのうち無くなるのを待つのです。どこかに流すという訳ではないような。時々海の底の土を耕さないと水が浸透しなくなるそうです。

でもただ穴を掘ったのでは庭の景観としてイケてません。なので手水鉢を添えたりして。ついでに手水鉢の水も流せるし、上手い具合に落としどころを見つけたなぁと思います。

 

雨が降りだして、庭の見え方も一変。鶴石がヌラッと光ります。庭に雨、風情が増します。

 

庭は部屋を掃除するのと同じレベルで、とっても清潔でした。枝の透かし具合から見ても庭の管理も相当きちんとなされています。だからこそ、こんなにも一体感があるのです。

座敷は埃一つないのに、庭は生い茂りまくりで、折角の庭石も見えなかったらだったらどうでしょう。そこまで極端でなくても、一か月間なにも掃除していない庭と、昨日今日掃除した庭の差は、誰が見ても分かりますよね。そこなんですよ。

個人邸で毎日の掃除は大変でしょうが、こちらのように公開している庭だったり、モデルハウスの庭とか、お商売をされているところの庭は、室内と同じ程度に掃除して季節ごとに整えないと、全てが台無し。ちぐはぐに見えるので、気を付けたいところです。

 

見学を終えて外に出ると結構降っていて、お陰で足もとがずぶ濡れ(´;ω;`)ウゥゥ

 

受付にはオジサマ3人が座っておられ、希望すれば各部屋の詳しい解説をして下さいます。タイミングがあえば家猫がひょっこり顔を出してくれるかも。私は台所の吹き抜けあたりでみました(^^

撮影も自由。通年予約制で公開されているそうですが、今月一杯は観光協会主催の特別公開なので、予約なしですぐ見せていただけますよ。