昭和初期に建てられた古民家の庭を改修させていただきました。
ブロック塀に囲まれた前栽に来客様の駐車スペースを設けて欲しい。建物裏の和風のお庭(以下、主庭)は、既存の材を精査し手入れのしやすい庭にして欲しい。その他は全てお任せします、とのご依頼でした。
解体撤去工事から関わらせていただき、元々ある景石や灯籠など、何をどう生かすか考えながらプランを進めていきました。

BEFORE:建物裏の庭園 解体直後の様子
植木については、以前の持ち主が、長年自己流の剪定を繰り返したことで樹形が崩れてしまっており、殆ど処分せざるをえませんでした。
一方、石たちは少々年月が経っても劣化しません。昭和の庭師さんが選んだ景石は、とても立派で表情があり、更に苔むして益々味わい深い佇まいです。どれくらいの大きさの石がいくつあるか把握し、できるだけ使いきりたいと思いながらプランニングしました。
最終的に処分したのは、場に余り用に差し支える程の巨石と、片手で持てるような小石が幾つか。それに山燈籠一基。その他殆どは再利用できたのでよかったと思います。

新たに組み直すにしても、自然なストーリーを意識して其々の場所を考えました。
例えば庭奥にある立石は、以前は石ひとつだけ携え樹々に埋もれて全く目立っておりませんでした。要になる石だと思ったので、不要な木を抜いて両側に添え石をし存在感を高めました。更に室内から視線を誘導するよう飛石を立石に向かって打ち直しました。

また沓脱石のそばにあった蹲(つくばい。お茶事で客が手を清める場所。茶庭以外では、単に庭の装飾というか、眺めのひとつとして作られることも多い)は、庭の中央を広く空けて欲しいと願う施主様にとっては、場を塞いでいるだけのものでした。
ただ、手水鉢は残したいと希望されましたので、動線の邪魔にならず棗型手水鉢本来の使い方である縁先に移動させました。
来客時には、水を張り花を浮かべたり、飲み物を冷やす、なんて使い方もできそうです。

工事は昔の職人さんの作庭意図も汲みつつ、でも私なりの新しい解釈で石を据え直す作業がメインです。一つ動かすと、それに添うように次の石を調整、そんな作業の連続です。
通常、手で持てないような石は、庭先にユニック車を横付けして吊りながら作業します。しかし、ここは車が入れないため、全て人力で進めなければならなくて、職人さんは本当に大変でした。



ディアガーデンの庭づくりでは、昼間だけでなく夜の庭も愉しめるようライティングプランも必ず提案しております。
今回ご採用いただいたのは、モダンな和の照明。

昨今燈籠は、和を象徴する「置物」で、単にフォーカルポイントとして使われがち。
当たり前の話で恐縮ですが、燈籠は元々照明装置として作られたものです。火袋という穴に、油と灯芯を入れた小皿を仕込み、火を灯していました。
現在様々なデザインのシェードがあるように、燈籠も置かれる場所や用途によってデザインが異なり、一つひとつ調べていくと、なるほどなぁと思います。例えば、この庭の燈籠は庭全体を照らすよう高い位置に火袋があります。
「用の美」をデザインの根源とする私共は、やはり燈籠は照明として使ってこそ、その良さが分かるものと考えます。お施主様も同意くださり燈籠にも照明器具を設置しました。
情緒ある炎も良いけれど、そこはあえてLEDを選択。現在の用「ハイテク」で代用する方が安全だし、自動点灯消灯などの便利な機能もついております。


古民家の庭の風情はそのままに、現在の暮らしにフィットさせる改修、参考になりましたでしょうか。刈り込みが必要な庭木に手が回らず、持て余しておられる方も多いと思うので、ご一考のキッカケになれば幸いです。
郊外では、空き家が増えているこの頃。
この建物のように、うまく手を入れると、まだまだ住み継ぐことができる家も多いと思います。
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SPEC
竣工 2025年1月
施工場所 滋賀県近江八幡市
施工内容 造園